2012年12月18日火曜日
絶望するにはまだ早い。
十二月の衆議院選挙について書き残しておこうと思います。
テレビの報道番組で自民圧勝の数字を見た瞬間、スッと血の気が引いて視野が暗くなるのが分かりました。ああ、人間は理解しがたい怒りに陥ると本当に血の気って引くんだと妙に納得している自分がいました。
予想はしていたとはいえ、やはりショックでした。ぼくが暮らすこの国は辛い経験から教訓を得て前に進もうとするのではなく、辛いことはまるでなかったかのようにする社会なのだろうかと。
でも、ぼくは一つのことを思い出していました。
選挙前からぼくの周りで十代の友人たちが「選挙権がなくて悔しい」と発言していたことを。それはぼくにとって大きな驚きでした。ぼくは十代のときにそんな風に考えられなかったし、そんな風に考えられる人たちが生まれつつあるんだと。
主義主張で政治に参加したいのではなく、今の状況をフラットな視点で見て、「これはおかしいんじゃないか」と思う十代たち。ぼくは今回の選挙結果やそれを支えた団塊の世代たちに絶望してしまったけれど、その絶望を今の十代に引き継がせちゃいけないんじゃないだろうか。絶望するにはまだ早いんだと。
そんなことを考えて眠れない選挙当日の夜に、十五歳の友人からメールが届きました。彼女も憤りで眠れないらしく、ぼくたちは深夜のメールを交わしました。本人から許可を得てメール内容を掲載します。メールの内容よりも、こんな風に思っている十代(きっと少数派だろうけど)の空気感が伝わるといいなと思います。今の社会は十代からはこんな風にも見えたりするのだと。
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十五歳:稲田さーーーん!(泣)
稲田 :どうした?
十五歳:もう選挙終わっちゃったけど、選挙権欲しいっす。
稲田 :だよねー。気持ち、とってもよく分かるよ。
ぼくも今回の結果は呆然とするくらいショックでした。
十五歳:私もですー!十五の子どもがあまり偉そうに言えないですけど…原発のことも憲法のことも、国民投票とかで政策がそのまま実行されないとは思うんですけど…。
でも、ああいう政策がスタンスな政党が与党になっちゃうのが嫌なんですー!地震あってからまだ二年もたってないのに、何で自民党圧勝なんですかねー。
稲田 :ぼくも全く君と同じ考えです。東日本大震災から初めての衆議院選挙なので、国民としても「これからぼくたちはどう生きていくのか?」の意思表示をする選挙だったのです。原発であったり、税金の使い方だったり。
それが、今回の自民圧勝から伝わってくることは、この国の人々は「被災地のことより雇用や経済効果を、原発の問題より自分たちや企業が安価に使える発電システム」を選択したということです。信じられない。いったい、あの震災から何を学んだのかと呆然としました。
でも、唯一の救いは君のような十代の人たちから「これはおかしいんじゃないか」「選挙権がなくて悔しい」という声がちらほらと聞こえてくることです。
ぼくたち選挙権を持っている世代は君たちが二十歳になるまでにせめて今よりましな社会環境に整え、君たちを迎え入れることが大切だと思いました。こんな現状にうんざりするかもしれないけれど、選挙権を得る日まで社会に絶望しないでね。ぼくたちもがんばります。
十五歳:絶望はしませんよ。ただ、堂々と反論できる知識と力を早くつけたいと思いました。んー、復興にもお金が必要なのは確かですけど、経済の「成長」よりももっと急がなきゃいけなかったり、大事にしなきゃいけないものがあるのに…。
自民党を支持した人の半数が望んでいる「景気の回復」っていうのは、震災のことを考えると、冷たい空気を感じるし、本当の豊かさではない気がします。
稲田 :うん。君の考えに同意します。ぼくも今回の自民圧勝で感じたことは、「震災者の救済よりも原発よりも経済成長と景気回復」という余りにも狭窄的で自分勝手な考え方でした。
それは震災から何も学んでいないし、グローバル化以降問われている「本当の豊かさ」という価値観についても今回の選挙で何も提示できていません。それよりも旧態依然とした価値観にまだ大人たちがしがみつくという怖さがぼくには感じられました。もしかしたら君も同じような違和感や気持ち悪さを感じているのかもしれません。
十五歳:すっごい感じます!名詞としては経済「成長」ですけど、退化に感じます。それに知識不足なので理由や根拠はありませんが、もう向かうべきところは、そこじゃない気がするんです。
稲田 :うん。君の言ってることはすごくよく分かります。君の言葉からも考えるヒントをたくさんもらいました。ありがとう。
東日本大震災と今回の選挙で「このままじゃいけないんじゃないか」と考え始めた人が沢山いるのだと思います。年齢や社会的役割と関係なく。君のように。ぼくはそういった人たちとできるだけ会って、話をして、これからの自分の考え方を定めていきたいと思っています。今日はありがとう。おやすみなさい。明日、学校で寝て怒られませんように。笑
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選挙当日の夜、一億三千万分の二同士の三十八歳と十五歳がこんなメールを交わしていました。
もしかしたら日本のあちこちでひっそりと同じような会話が交わされていたのかもしれません。
投票する人の平均年齢は五十代だそうです。そして投票する人は有権者の五十パーセント。どれだけ若年層不在かがよく分かります。投票なんかしたって何も変わらないよと思ってしまいがちですが、こんな風に「おかしいんじゃないか?」と考えている十代たちもいて。
もし、ぼくたちが「やっぱり選挙なんかしたって何も変わらないよ」と思ってしまえば、その負の遺産を彼らに引き渡すことになるんだと今回の選挙で気づきました。二大政党制でないと民意が反映されがたい小選挙区制度といった現行システムの問題点もありますが、「何も変わらないよ」と何十年も続く負の遺産をぼくたちで止めることは大切な役割なんだと。もう、そろそろ変わってもいいですよね?
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